Project Description
#移住 #インタビュー
経験ゼロからのお店作りに挑戦。 瀬戸田で憧れのハンバーガーショップをオープン。
ハンバーガー屋の店主 たかださん
たかださん
・夫婦で瀬戸田に移住
・未経験ながらも移住後にハンバーガー屋をオープン
瀬戸田水道沿いに位置する小さなコンテナ。レモン色の椅子にコカ・コーラの瓶ケース。一輪の花が咲く瓶もある。たかださんご夫婦でやられている昨年夏にオープンしたハンバーガー屋さんだ。今回は、NYCの帽子とエプロンがトレードマークの店主・たかださんにお話を伺った。
瀬戸田水道沿いに位置する小さなコンテナ。
レモン色の椅子にコカ・コーラの瓶ケース。一輪の花が咲く瓶もある。
たかださんご夫婦でやられている昨年夏にオープンしたハンバーガー屋さんだ。
今回は、NYCの帽子とエプロンがトレードマークの店主・たかださんにお話を伺った。
なぜ瀬戸田だったのか。
店主のたかださんはもともと横浜に住むカメラマン。
自転車を趣味として、2011年にしまなみ海道を初めて訪れた。
「ここで人生を締めくくることになるかもしれない。」
そのときにそう思ったそうだ。しかし、その後は東京での仕事に忙殺され、なかなか移住は実現できなかった。が、2020年、緊急事態宣言が発令されたのをきっかけに移住を検討。
2011年の旅で出会ったしまなみ海道の中からいくつか候補を出していざ、移住先探しの旅へ。
そしてその際に数ある候補の中の一つが瀬戸田だった。
「大三島とか、もちろん瀬戸田とかみていて、愛媛よりは広島がいいなと思っていた。で、奥さんが『やっぱり瀬戸田がいいな』と言ったから瀬戸田にしようと決めた。
なぜハンバーガーだったのか。
「あ~ハンバーガー食いたいな~」
2011年、しまなみ海道を初めて訪れた際にそう思ったそうだ。
このふとした思いから、現在のゴロッケンは誕生した。もともとハンバーガーの美味しいお店や名店を巡るのが好きだったたかださん。
「未経験のもの、全然やったことないものをやりたかった。逆に前職に繋がっていたものはやりたくはなかった。瀬戸田はここに来てから一度も握ったことがないね。笑」
飲食は全くの未経験だったが、未経験だったからこそやりたいと思ったらしい。そうは言っても、知識は全くのゼロ。店を建てるのに必要な法律や許可などを勉強しつつ、開業の準備をスタート。
一番苦労したのは、物件の検討。
「地元の人は、外から来た人に土地を売りたがらない節があったから、物件を決めるのに時間がかかった。」とたかださん。
建物や物件のややこしい構造をクリアする必要があったため、商店街の人に繋いでもらいながら、物件の検討を進めた。
そして、物件を決定後、本格的にお店作りを始動。
ウッドデッキを手作りしたり、プレハブ小屋を設置したりと開店へ向けて準備を進めた。店舗、という形ではなく、プレハブ小屋にしたのはなぜなのか、気になって聞いてみた。
「まずは、お金を使いたくなかった。あとは、今のご時世人混みを避けることが必要だから、むしろ小さいくらいの方がいいんじゃないかと思って。」
あえて店舗を構えず、小規模なスタイルを現在も大切にされている。そして、2021年7月22日、日本マクドナルド第一号店が銀座にオープンした「ハンバーガーの日」にお店をオープンさせた。
地元の人の反応
「地元の人は、毎日開業の準備をしているのを見ていたから、地元の人とのギャップというのはあまりなかった。」という。
「お店をオープンする前に、たまたまお店の裏の掃除会に行った。そうすると移住者がそういう地域の行事に来たことに地元の人はびっくりしていて、それを機に地元の人には受け入れられやすくなったかな。」
やはり、地域の行事に参加するということは、移住先の地域の人と打ち解けられる、地域に溶け込めるコツなのかもしれない。
また、たかださんは移住者の心構えとして、もう一つコツを教えてくれた。
「瀬戸田とか山陽の人は特に、オープンな人柄が特徴。地元の人は沢山受け入れてくれている。」
「外から入ってくる人が身構えてると、逆に地元の人とぎくしゃくしてしまう。オープンに地元の人と接していけば打ち解けやすくなるんじゃないかな。」
古来からの「港町」という気質もあるのかもしれない。外から来る人に対して寛容で、温かく手を差し伸べてくれる瀬戸田の人に少し寄りかかって、手を取ってみることも大事なことなのかもしれない。
島ならではの苦労
「瀬戸田はね、ものがない。」
たかださんが語る瀬戸田の大変さだ。
「材料がね、揃わない。料理の材料もそうだけど、例えばサイクリストのための自転車の部品とかも揃わなくて、不便だと感じることが多い。材料調達に遠くに出かけるとガソリン代とかがかかるから、それだけで赤字になる。利益を本気で追及して商売をする人にとったら大変だよね。」
と、商売する人に関わらず、住民が生活するうえでの課題ともなるであろう、「ものが揃わない」問題。基本的な食材や生活雑貨は島内のスーパーやドラッグストアで揃うものの、「あれがあったらいいのにな」という二次的、三次的な道具や材料などがすぐに調達できないというのは島生活の弱点といえるかもしれない。
「けど、今は何でもネットで揃う時代。あるもので柔軟に対応していける。」
限られた環境の中で工夫していくことが重要なのだ。
移住者へのメッセージ
最後に、移住者へのメッセージを伺った。
「まずは、自分で楽しんでほしい。好きじゃないと絶対やっていけないから。『地域を盛り上げるんだ!』とか気負わなくていいから、楽しんでほしいね。」
たかださんの、お客さんとの接し方やお仕事の様子を拝見すると、「楽しい」という感情が伝わってくる。
「今後はお客さんに喜んでもらえるようにお店を展開していきたい。例えば、夏の日差し除けのためにコンテナの後ろにイートインスペースをつくるとか、自転車乗りを迎える空間を作って自転車の醍醐味を伝えるだとか。」
今後の展望としては現在のコンテナの規模は維持しつつも、機能は追加しつつお店作りを進めていきたいという。大きな口を開けて看板メニューのJBOYを頬張る。瀬戸田水道の少し冷たい潮風が吹く正午過ぎ。
たかださん一押し、「ハンバーガーを食べ終わった後の袋に少し残ったソースにポテトをつける」戦法で胃と心を満たす。
たかださんがお客さんと喋っているところを奥さんが優しい笑顔で見守り、ときには「もういいよ、ごめんなさいね、話長くて。」とツッコミを入れる。
今日も夫婦二人三脚でハンバーガーを作り、お客さんを迎える。もう春はすぐそこ。
たかださん手作りのウッドデッキが大活躍する季節がやってきた。
「俺らのハンバーガーは、俺らのハンバーガー」
あたたかい風を身にまとわせながら、ゴロッケンにしかない味とたかださん節をぜひ堪能して欲しい。